つくりながらまなぶ 教育理論

2021.06.07

AIなどのテクノロジーが急激に進歩し、世界の変化するペースが加速し続けています。そんな近い将来を生きる子どもたちは、常に変化していく世界の状況に対応する方法を学ばないといけません。

人生100年時代の新しい教育論はどのようなものなのでしょうか。


スクラッチ

今年から小学校のプログラミングがはじまって、プログラミングの「Scratch」にふれたことがあるという方も少しずつふえてきたのではないでしょうか。

スクラッチはブロックといわれるコードをはめ合わせることで、視覚的にどのような動きを作ることができるかわかるプログラミング開発環境です。

スクラッチ.png今では日本のスクラッチ登録ユーザーが85万人になっており、関心が高まっています。

(全世界で見るとこれでも1.25%なのですね:2021年6月14日現在)

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ゲームを作ったり、アニメーション動画をつくったりしながら「コンピュテーショナル思考・プログラミング的思考」を学べるスクラッチは、表面的にプログラムを書けるようになるためのツールに見えるかもしれませんが、

実は開発者の意図はもう少し大きい視点で開発されています。


ScratchMIT LifelongKingergarten

スクラッチはマサチューセッツ工科大学(MIT)のメディアラボ、ライフロングキンダーガーデングループが開発した

無料の教育プログラミング言語です。

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開発された背景の哲学について詳しくはライフロングキンダーガーデンという本に書かれていますが、

まずMITメディアラボは従来の学校の学び(知識は伝達するもの/先生から多数の子どもに教える)に対して、シーモアパパートによる新しい学習理論(構築主義:子供たちは、自ら進んで自分たちにとって大事なものを作っているときに最もよく学ぶとする理論)の上になりたっています。

その中でミッチェルレズニックは、「すべての年齢の子供たちの、プロジェクト型で、各自の興味に基づいた、共同学習体験を支えるツール」としてスクラッチを開発しました。

私が気になったスクラッチの目的は、

「コーディングを学ぶ」ためではなく「学ぶためにコーディングする」ために作られているということです。

本書ではプログラミングをスキルとしてまなぶのではなく、

スクラッチを通して、自分が作りたいものを試行錯誤しながらつくることで、

より深い学びのある体験をする子ができる

そして子どもたちが実験し、探求し、自らを表現し、創造的思考者として成長することが目標であるとしています。


エクスプロラトリアムのティンカリングスタジオ

サンフランシスコにある革新的な科学館エクスプロラトリアムではMIT出身者がコンピューター上だけでなく実際にものを作りながら試行錯誤をする"ティンカリング"を提案しています。

さまざまなテーマのワークショップでは、いろんな素材をつかったり、回路や機構、動画作成など、つくりながらまなぶ手法を展開しています。

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つくるまなぶ子どもイノベーター講座

つくるまなぶ京都町家科学館では、子どもたちが実験し、探求し、表現し、創造的思考者になる「生き抜く力」育むための講座を2021年1月から開始しました。

月ごとのテーマを学びながら実験したりさまざまな素材をつかって工作をしたり、最後の4回目講座では自分で作りたいものを決めて自由に作る。

これを作りましょう!といった1つの正解に向かってアクションをするのではなく、自分はこう思うからこんなものを作りたい!という思いをきっかけにものづくりをすると、はじめの説明はみんなに同じようにしたのに出来上がる形は皆それぞれちがっていて、作ったものを発表するとさらにお互い感化されさらなる工夫や気づきが生まれます。

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(服をつくってまなぶ!4回目講座より)

まだ日本でこのような取り組みの講座をしているところは少ないかもしれませんが、言われたことだけをする人ではなく自分から創造できる人が社会で求められるにしたがって、このような学びの場が必要になってくると考えています。

つくるまなぶでは、学び方の選択肢としてこんな学び方があるんだ!ということを広げてゆきながら少しずつコミュニティを増やしてゆきたいと考えています。

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平河 翔