何故、地域の生活の場に町家科学館をつくったの?


2022.10.17

私たちは、長年仕事として関わっている科学展示装置づくりの専門家です。

全国にある主要な科学館へその装置の納入を通じて、

科学や科学技術に関する情報を、非専門家(生活者)に提供してきていますが、

急速に進むAIやIOTなどデジタル化の波に対応した情報が提供できているのだろうか?と考えるようになってきいていました。



それは、いままでは、専門家からの一方通行で良かったことが、

今日の社会変化は予測できないことだらけで将来不安で満ちています。

その対策として、科学技術と社会(専門家と非専門家)との相互依存関係の必要性が、

かつてないほど強まっていることであります。

今までの私たちの活動は、自動化された効果や現象だけを表現した展示装置で、

科学や科学技術を専門家が提供するという一方的な「啓蒙や理解促進」だけで本当に良いのだろうか?ということです。

この装置の受け手は誰なのか?を考えると、当たり前なことですが、その受け手は生活者自身(非専門家)です。

社会貢献を責務として活動を進めている私たちは、

生活者の未来の選択にかかわる課題の対応や決定を、私たち送り手の専門家だけに任せるのではなく、

双方が協働して課題に向き合い課題解決をしていく活動の必要性があるのではないだろうか?

私たち専門家は、科学リテラシーを生活者に伝えることとだけではなく、

生活者からのさまざまな思いや考えを学び、専門家の社会的リテラシーを高め、

さらには、科学と社会の望ましい関係について、

双方で考えていけるような仕組みづくりの必要性を考えるようになってきていました。

それは、

私たち専門家が科学展示装置づくりの考えややり方を生活者(非専門家)にどのように伝えていくかであり、

また、そのことを双方で語り合い協働する場をどうつくっていくか、であることにたどり着きました。



そうして、私たちは2年半前に"つくるまなぶ京都町家科学館"を地域の生活の場につくりました。

その科学館では、科学の要素だけを伝える装置体験で、科学の面白さ楽しさと出会い、ものづくりのプログラムを通じて"つくるとわかる、もっと知りたくなる!"ことが実感でき、ワクワク感を醸成して双方の距離を近づけることができる科学コミュニケーションの活動を行っています。

まずはやってみて、やりながら考える活動を進めていき、町家科学館の体験を通じて「問い・考え・行動」につながる人財づくりに貢献できる事業を創造したいと、日々取り組んでいます。

宿野 秀晴