地元京都の阪急電鉄 西院駅・大宮駅の歴史? 身近にあった「土木遺産」 ?


2022.12.19

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■阪急電鉄 大宮駅

先日、近所の商店街でイベントがあり、昔の街並みの写真がたくさん展示されていました。

その中に昔の阪急大宮駅の写真があったのですが、大宮駅舎の写真には「大宮駅」ではなく「京都駅」と書かれた看板が写っていました。その写真を見て、ちょっと興味が湧いてきたので、ローカルな話題ですが阪急大宮駅について調べてみることにしました。

■「大宮」駅はむかし、「京都」駅だった!?(出典:京都リビング新聞社)

https://www.kyotoliving.co.jp/article/191012/last/index.html

現在、阪急の京都線は、「大阪梅田駅」と「京都河原町」を結ぶ路線です。

「大阪梅田」-「十三」-・・・・・-「西京極」-「西院」-「大宮」-「烏丸」-「京都河原町」

「大阪梅田」?「西京極」までは地上を走り、「西院」?「京都河原町」は地下を走っています。

現在の阪急京都線は、開業当初はライバル会社である京阪電鉄の新しい大阪と京都を結ぶ路線として、子会社の新京阪鉄道が建設しました。

当初(1928年/昭和3年)は、「西院 地上仮駅」での開業で、3年後(1931年/昭和6年)に「京阪京都駅(現 阪急大宮駅)」が完成し、大阪は「天神橋駅(現 天神橋筋六丁目)」が終点で、京都は「京阪京都駅(現 阪急大宮駅)」が終点の路線が完成しました。

■当時の駅プラットホーム(出典:ジャパンアーカイブズ)

https://jaa2100.org/entry/detail/059365.html

「京阪京都駅(現 阪急大宮駅)」への線路建設は、もともとあった国鉄山陰線(JR嵯峨野線)と交わるため平面交差できません。高架にするには市内中心部の用地買収が困難で、同時期に四条通の拡張工事が計画されていたため、四条通の下を通る地下鉄となりました。

 阪急「西院駅」「大宮駅」間の路線は、大阪の地下鉄御堂筋線より早いため、関西で最も古く、全国でも東京の地下鉄銀座線の次に古い地下路線として現役で残っています。

 当時の工事は、四条通の地上から穴を掘り、鉄筋コンクリートでトンネル状の箱を作り、その後土で埋め戻す工法がとられましたが、このあたりは地下水の水位が高く、地下水が湧き出し工事は難航したそうです。

 このように苦労して建設された地下路線ですが、土木的価値があるとして「土木学会選奨土木遺産」として認定されています。

http://www.jsce.or.jp/contents/isan/blanch/5_5.shtml

■阪急 大宮駅

大宮駅_IMG_8539ss.JPG

■阪急大宮駅コンコースに掲げられている「土木学会選奨土木遺産」のプレート

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■地下のトンネル入口(阪急 西院駅近く)

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□「天人併其功(てんじんそのこうをあわす)」のプレート

「天の力と人の力が合わさってなし遂げられた」という意味で、新京阪鉄道の親会社であった京阪電鉄社長の文字が掲げられている。

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□鷹の像

 守護神としてトンネルの入口に飾られ安全を守っている

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□架線柱の建造年月「建 昭 3・11」

 開業した昭和3年建造の架線柱を今も使用されている

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■元祇園梛神社に寄進された灯篭

 新京阪は安全運行を祈願して沿線の元祇園梛神社(四条通の壬生寺道)に灯篭を寄進

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■その後

 1943年/昭和18年に戦時体制のもと私鉄再編成が行われ、「京阪電鉄」と「阪急電鉄」は合併し、新会社「京阪神急行電鉄」になり、駅名の「京阪京都駅」は京阪が抜け「京都駅」になりました。

そして1963年/昭和38年に「河原町」まで延伸され、32年間の終点駅の役割を終え、駅名は「大宮駅」に改められました。

戦後1949年/昭和24年、再び「京阪神急行電鉄(現 阪急電鉄)」から「京阪電鉄」が分離したのですが、京阪電鉄は、自ら建設した新京阪京都線を手放すことになり、阪急電鉄が受け継ぐことになりました。

 1973年/昭和48年に「京阪神急行電鉄」は、略称であった「阪急電鉄」に社名を変更し現在のかたちになりました。

■まとめ

 私は阪急大宮駅・西院駅のプラットホームは、柱や壁、天井の造りが古く少し暗い感がして、あまり良い印象を持っていませんでしたが、歴史を調べてみて関西で最も古い地下路線であることや、紆余曲折を経て現代に受け継がれていることを知り、感慨深い気持ちになりました。

「土木遺産」は全国にあり皆様の近くにもあると思いますので、一度調べてみてはいかがでしょうか。意外な発見があるかもしれません。

全国の「土木学会選奨土木遺産」(出典:公益社団法人土木学会)

http://www.jsce.or.jp/contents/isan/index.html

2022.12.19

吉岡 亮